近年、医学界で最も注目を集めている分野の一つが、腸と脳が相互に影響を及ぼし合う「脳腸軸(腸脳相関)」のメカニズムだ。妊娠中の母体の腸内環境は、単に母親自身の便秘解消や健康維持にとどまらず、胎児の免疫系や神経系の発達に深く関与していることが近年の研究で判明してきた。
母体の腸内に存在する多様な細菌群は、食物繊維などを分解して短鎖脂肪酸をはじめとする様々な代謝産物を生成する。これらが母体の血液を介して全身を巡り、母体の免疫バランス(炎症性サイトカインの制御など)を整える。妊娠中の母体内で強い全身性炎症が起きると、胎児の脳発達に悪影響を及ぼす可能性があることは以前から指摘されていた。つまり、腸内環境を健全に保つことは、間接的に胎児のすこやかな成長を支える基盤となり得るのだ。