左側の腰背部痛を引き起こす代表的な内臓疾患には、明確な臨床的特徴が存在します。特に警戒すべきは、激痛を伴う泌尿器疾患と、致命的な経過をたどりうる消化器疾患です。
まず疑われるのが尿管結石の初期症状による腰痛です。腎臓で形成された結石が細い尿管に下降して詰まると、腎盂の内圧が急激に上昇し、冷や汗が出るほどの激痛(疝痛発作)が左腰から下腹部、そけい部へと放散します。「七転八倒の苦しみ」と形容されるこの痛みは、姿勢を変えても一切緩和されず、血尿や頻尿を伴うケースが約8割にのぼります。
また、悪寒や高熱(38度以上)を伴って左腰をトントンと叩かれた時に響くような激痛(叩打痛)が走るなら、腎盂腎炎による左腰の痛みを疑わなければなりません。細菌が尿道から逆流して腎臓深部に達した状態であり、治療が遅れると敗血症を引き起こし命に関わります。
さらに見過ごしてはならないのが急性膵炎や慢性膵炎に伴う背中から腰にかけての鈍痛です。アルコールの多量摂取や脂っこい食事の後に、みぞおちから左側の背部・腰へ突き抜けるような重苦しい痛みが現れ、前屈みの姿勢(エビのように丸まる姿勢)をとるとわずかに和らぐのが古典的な臨床的特徴です。膵臓が分泌する強力な消化酵素が自らの組織を溶かしてしまうため、早期の入院加療が欠かせません。