歌舞伎にあまり詳しくない方から「なぜ松本幸四郎家と市川團十郎家、尾上松緑家はこれほど親密なのか?」という疑問が寄せられることが少なくありません。その答えは、明治・昭和期における歌舞伎界の歴史的ルーツにあります。
すべての鍵を握るのは、近代歌舞伎界の巨匠である七代目松本幸四郎(1870〜1949)です。七代目幸四郎は、実に卓越した3人の男子をもうけました。
- 長男:十一代目市川團十郎(成田屋を継承。当代・十三代目團十郎白猿の祖父)
- 次男:初代松本白鸚(八代目松本幸四郎。当代・十代目幸四郎の祖父)
- 三男:二代目尾上松緑(音羽屋へ養子入り。四代目尾上松緑の祖父)
つまり、歌舞伎界の頂点に君臨する成田屋の宗家である市川團十郎家と、高麗屋の松本幸四郎家、そして音羽屋の尾上松緑家は、完全に同じ父親から分かれた実の兄弟の家系(男系直系血族)なのです。
したがって、当代の十代目松本幸四郎と十三代目市川團十郎白猿、四代目尾上松緑は、血縁上「はとこ(再従兄弟)」の間柄にあたります。高麗屋と成田屋が舞台上で息の合った共演を見せる背景には、単なる同業者としての連帯だけでなく、濃厚な血の絆が存在しています。