臨床の現場は過酷を極める。精神科クリニック、スクールカウンセラー、児童相談所、司法機関。心理カウンセラーが日々向き合うのは、虐待、自傷行為、重度の抑鬱、パーソナリティ障害といった人間の生の暗部だ。クライエントが抱える圧倒的な感情の激流に晒され続けることで、カウンセラー自身が心に傷を負う「二次受傷(代理受傷)」のリスクは日常的に存在する。
かつてジークムント・フロイトが精神分析の黎明期に指摘したように、治療関係には激しい感情の転移と逆転移が渦巻く。現代の臨床心理学においても、その力動を制御し続ける精神的負荷は計り知れない。面談がひとたび終われば、カルテの記録、他職種とのカンファレンス、関係機関との連携業務が山積する。密室での極限の緊張感と、終わりの見えない事務作業。この二重苦が、多くの専門職の気力を根底から削り取っていく。