現在でも居酒屋や馬肉専門店で「馬レバ刺し」が堂々と提供されているのを見て、「なぜ牛や豚は違法なのに、馬だけは許されるのか?」と不思議に思う方は非常に多いはずです。その答えは、動物の生理学的特徴と菌の生息環境の違いにあります。
最大の理由は、馬が牛と異なる「奇蹄類(単胃動物)」である点です。牛のように4つの胃を使って反芻しないため、腸管出血性大腸菌を体内に保菌するリスクが極めて低いとされています。また、馬は平均体温が約38〜40度と牛や豚に比べて高く、雑菌が体内で繁殖しにくい体内環境を持っています。さらに、馬肉の生食に関しては厚生労働省が定めた厳格な衛生基準(マイナス20度で48時間以上の冷凍処理によるサルコシスチス寄生虫の失活など)が確立されており、科学的に安全性が証明されているため合法とされているのです。
畜種ごとの規制状況、主な病原体、法的罰則の違いは下表のとおりです。
このように、同じ「肝臓」であっても動物の生態や内臓構造によってリスクの本質は全く異なります。「牛がダメだから鶏や豚なら安全」といった考えは重大な医学的誤認であり、特に鶏レバーの生食によるカンピロバクター感染は、後遺症として手足の麻痺や呼吸困難を引き起こすギラン・バレー症候群を誘発するリスクがあるため厳重な注意が必要です。