ネット上のガジェットコミュニティやSNS(X、旧Twitter)、5ちゃんねる、Yahoo!知恵袋などの投稿を分析すると、トリプルスロットに執着するユーザーには極めて現実的かつ切実な事情が存在することが分かります。
最も多く見られるのは、「勤務先から支給された社給SIMが物理nanoSIM限定で、eSIM発行に対応していない」という声です。会社のセキュリティ規程上、貸与されたSIMカードを社外の端末に挿して使うことしか許されず、eSIM再発行の申請が通らないケースです。こうしたユーザーは、自分の個人用SIM(物理)と社給SIM(物理)を1台にまとめ、さらに子供の写真や私的なデータを会社の通信網とは無関係なmicroSDに逃がすため、どうしても物理トリプルスロット端末を指名買いせざるを得ません。
また、海外渡航が多いビジネスパーソンや旅行者からの支持も根強いものがあります。「日本の主回線SIMを挿したまま、現地空港の自販機で購入した格安プリペイド物理SIMを挿入し、旅先の高画質4K動画をSDカードにガンガン保存する」という使い方において、物理トリプルスロットは今なお唯一無二の安心感を提供しています。
一方で、大手量販店の現役販売スタッフは取材に対して次のように明かします。「『SDカードと2枚のSIMが全部入る機種をください』と来店されるお客様の9割以上は、eSIMの仕組みをご存じないだけです。ご自身の個人回線をその場でeSIMへ切り替える手続きをご案内すると、国内メーカーの防水スマホでも全く同じ使い方ができると納得され、選択肢が一気に広がって満足して帰られます」。現場では、物理スロットへの固執が単なる「規格への思い込み」から生じているケースも目立っています。