東京や大阪の論理だけでは語り尽くせないのが、各地方が頑なに守り続けているローカルな呼び名です。現地を取材すると、それぞれの風土に根ざした強烈なこだわりと、SNS時代ならではのコミュニケーションギャップが見えてきます。
広島県民のソウルフード「二重焼き」の現場
広島県では、コンビニやスーパーの店頭でも平然と「二重焼き」の看板が掲げられています。由来については諸説ありますが、広島の製菓職人の証言や地元史料によると、「2枚の鉄板を上下から挟み込んで焼き上げる二重構造の焼き方」から名付けられたという説が有力です。
広島出身者が他県に進学した際、「食堂や祭りの屋台で『二重焼きください』と注文して店員にポカンとされた」というエピソードは、広島県民あるあるの鉄板ネタとして知恵袋やX(旧Twitter)上で語り継がれています。
北海道・青森で「おやき」と呼ばれるカルチャーショック
北海道や青森県津軽地方では、丸い今川焼きを「おやき」と呼びます。長野県の信州名物である「野沢菜などを小麦粉や蕎麦粉の皮で包んで蒸し焼きにしたおやき」を想像している人が北海道のスーパーに行くと、あんこやカスタードが入った今川焼きが「おやき」として陳列されており、激しい混乱に見舞われます。
北海道立総合研究機構などの食文化調査によれば、明治期の開拓時代に本州各地から入植した人々が、手軽に作れる焼き菓子全般を「お焼き」と総称したことがルーツとされています。札幌市内では「サザエ食品」の十勝おやきなどが道民の定番おやつとして世代を超えて愛されています。
東北を席巻する黄色い看板「あじまん」
山形県天童市で創業した「株式会社あじまん」は、秋から冬(10月〜3月下旬頃)にかけてのみ、東北地方のホームセンターやスーパーの店頭に黄色いプレハブ店舗を構える独特のビジネスモデルを展開しています。
ぎっしりと限界まで詰められた自家製つぶあんと、冬季限定の「カスタードクリーム味」、さらには月替わりの限定フレーバーが特徴で、東北人にとって「あじまんの小屋が設置されると冬の訪れを感じる」と言われるほどの文化的ランドマークとなっています。そのため、山形や秋田では「今川焼き」という単語よりも「あじまん」という呼称が圧倒的な親しみを持って迎えられています。