シシ神の首が返還され、緑が再生したタタラ場の丘で交わされるアシタカとサンの最後の対話は、映画史に残る名シーンです。
サン:「アシタカは好きだ。でも、人間を許すことはできない」アシタカ:「それでもいい。サンは森で、わたしはタタラ場でくらそう。共に生きよう。会いに行くよ。ヤックルに乗って」
同居ではなく「通い婚」という共生の選択
多くの観客が抱く「二人は最終的に結婚して一緒に暮らしたのか?」という疑問に対し、宮崎駿監督は公式インタビューで明確な見解を残しています。二人はひとつの集落で同居することはなく、別々に暮らしながら定期的に逢瀬を重ねる関係(現代でいう通い婚・別居婚)を選びました。
サンは人間社会に同化することはできず、アシタカもまたタタラ場の再建に携わる責任を負っています。双方が自らのアイデンティティと生活拠点を妥協して同一化するのではなく、「互いの境界線を尊重したまま、互いを愛し続ける」という結末こそが、宮崎監督の提示した「共に生きる」のリアリズムでした。