とんかつという国民食において、ソースの果たす役割は極めて大きい。サクサクの衣にじんわりと染み込み、豚肉の脂の甘みを引き立てるあの濃厚なとろみ。日本の調味料製造業が長年磨き上げてきたブレンド技術の結晶だ。
そもそもウスターソース類は、日本農林規格(JAS)によって粘度ごとに明確に分類されている。サラリとしたウスターソース、適度なとろみを持つ中濃ソース、そして果実や野菜のパルプ分を贅沢に含んだとんかつソース(濃厚ソース)。原料となる野菜や果汁、醸造酢、香辛料の基本構成は驚くほど近いものの、粘度と甘味の比重が根本から異なる。ウスターソースは酸味とスパイス感が際立つシャープな設計だが、とんかつソースはリンゴやトマトのペースト、砂糖類をふんだんに使い、揚げ物の油分を包み込む丸みのあるコクを重視している。