封筒選びで最も致命的な失礼に繋がりやすいのが、水引(みずひき)の形状選びです。結婚祝いやお車代など、婚礼に関わる慶事では「一度結んだら二度とほどけない」ことを意味する「結び切り」または「あわじ結び」を用いるのが絶対の掟です。
出産祝いや入学祝いなどで多用される「蝶結び(花結び)」は、何度でも結び直せることから「繰り返してほしいお祝い事」にのみ使われます。結婚式で蝶結びの水引を使ってしまうと、「再婚を連想させる」「縁が切れて再び結び直す」という凶兆を意味し、年配のゲストや礼儀を重んじる層からは非常に厳しい目で見られます。また、婚礼用の結び切りは一般的な5本ではなく、両家が手を取り合って二重の喜びを表現する「10本結び切り」を選ぶのが伝統的な礼儀作法です。
表書き(オモテ面の文字)の記載ルールも厳格に定められています。
【上段の書き方(名目)】
水引の上部中央には、濃い黒インクで「御車代」または「御車料」と記します。どちらを用いても意味合いに差はありませんが、一般的には「御車代」が広く普及しています。なお、スピーチや余興を引き受けてくれた友人への純粋な謝礼であれば「御礼」「寿」とするケースもありますが、遠方からの交通費補助が主目的であるなら「御車代」と明記するのが最も親切です。
【下段の書き方(贈り主の氏名)】
水引の下部中央には、新郎新婦の名字を配置します。書き分けの基準は以下の通りです。
- 新郎側のゲストへ渡す場合:新郎の名字のみ(または新郎フルネーム)
- 新婦側のゲストへ渡す場合:新婦の旧姓(または新姓+新婦名)
- ふたり共通の友人・恩師へ渡す場合:両家の名字を連名で並記(右側に新郎姓、左側に新婦姓)
使用する筆記具にも細心の注意を払わなければなりません。ボールペン、シャープペンシル、万年筆での記入は、略式どころか「手抜き」と受け取られるため避けるのが賢明です。必ず毛筆または濃墨の筆ペンを使用してください。慶事では「お祝いの気持ちを太く濃く表す」という意味を込めて漆黒のインクを使い、香典などで用いる薄墨(うすずみ)のペンは絶対に混同しないよう確認が必要です。