スマートフォンやPCが生活基盤となった現代において、84画の文字をデジタル画面上でどのように表示・入力できるのかは、文字愛好家のみならずデジタルフォント業界でも長年の課題となってきた。
結論から述べると、iOSやAndroidの標準IME(キーボード)、あるいはWindowsやmacOSの通常変換で「たいと」を直接一文字として入力・表示することは極めて困難である。文字コードの世界標準規格であるUnicodeにおいても、「たいと」はJIS第1〜第4水準の枠組みを大きく外れており、基本多言語面はおろか通常の拡張漢字領域にも標準フォントとしてプリインストールされていないケースが大半を占める。
日常のデバイスでこの文字を取り扱う場合、以下の3つのアプローチが採られるのが現場のリアルである。
- 字形合成・IDS(漢字構成記述文字列)の利用:文字情報技術促進協議会やChiseプロジェクトなどが推進する技術を応用し、「⿺(雲雲雲)(龍龍龍)」といった部品単位のコード情報として処理する方式。
- 外字フォントの個別インストール:「今昔文字鏡」や「GlyphWiki(グリフウィキ)」等で有志が作成したフォントデータを導入し、私用領域(PUA)に割り当てて表示させる手法。
- 高精細画像・SVGデータの代替配置:Webデザインや文書作成の実務では、文字化けやレイアウト崩れを完全に防ぐため、ベクターグラフィックスとして文字を埋め込む手法が最も現実的とされる。
一方で、中国陝西省の麺料理「ビャンビャン麺」の「ビャン」は、国際標準化機構(ISO)とUnicodeコンソーシアムの協議を経てUnicode 13.0(2020年)において「U+30EDD」として正式登録された。これにより、主要OSのフォント更新に伴ってスマホ上での表示・入力ハードルが一気に下がった経緯がある。「たいと」をはじめとする日本の超稀少国字についても、文化庁や文字学研究機関による電子アーカイブ化プロジェクトの進展に伴い、将来的なデジタルアクセシビリティ向上が期待されている。