名前が酷似していることから、フィットネス愛好家の間で最も混同されやすいのが「小円筋」との違いです。しかし、機能解剖学の観点から言えば、この二つは正反対の作用を持つライバル関係にあります。小円筋は棘下筋とともに肩関節を「外旋」させるインナーマッスル(回旋筋腱板)の一角であり、大円筋は「内旋」を担うアウターに近いパワフルな筋肉です。
スポーツ整形外科の理学療法士やパーソナルトレーナーの現場取材では、この筋力バランスの崩れによる機能障害が多く報告されています。大手フィットネスクラブの指導員は次のように明かします。
「背中のトレーニングで『脇の後ろ側が痛い』と訴えて来られる方の多くは、大円筋のオーバーワークと小円筋の筋力低下によって、上腕骨頭が前上方へズレています。大円筋が過度に緊張して内旋拘縮を起こすと、肩を上げた際にインピンジメント(挟み込み)が発生し、ベンチプレスやサイドレイズで激痛が走る原因になります。」(都内パーソナルジム主任トレーナー談)
ネット上のQ&AサイトやSNS上でも、「懸垂をやり込んだら肩の後ろに刺すような痛みが走るようになった」という投稿が散見されます。これは、大円筋・広背筋・肩甲下筋という強力な「内旋筋群」ばかりが優位になり、ブレーキ役である小円筋や棘下筋が過剰に牽引されて筋膜炎や微細断裂を起こしている典型例です。大円筋と小円筋の作用は正反対であり、双方の張力バランスが保たれて初めて肩関節は正常な求心位を維持できます。