川の長さをめぐる論争において、最も見落とされがちな盲点が「水源」と「河口」の境界線問題です。ネットのまとめ情報では数字の比較ばかりが強調されますが、本質的な対立点は河川の始点と終点の解釈にあります。
まず「ナイル川の水源はどこなのか」という問いに対して、教科書的な回答であるビクトリア湖は不完全です。ビクトリア湖に流れ込む無数の河川のうち、最も遠い源流を遡る必要があります。長年ブルンジのルビロンザ川が最南端の水源とされてきましたが、2006年にイギリスとニュージーランドの探検隊がルワンダのニュングウェ原生林にあるルカルアラ川の源流を探査し、「新水源」として測定を更新しました。これによりナイル川の全長は6,700kmを超えるという主張も出されており、ナイル側も固定的な長さにとどまっているわけではありません。
一方のアマゾン川における最大の弱点は、河口部の「パラ川水路」の扱いです。マラジョ島南側の水路には、別の独立した大河であるトカンチンス川が注ぎ込んでいます。地理学者の中には「パラ川水路を流れる水の大部分はトカンチンス川のものであり、これをアマゾン川の全長に算入するのは無理がある」と指摘する声が根強くあります。この水路をアマゾン川から除外した場合、アマゾン川の長さは約6,400km程度に縮み、ナイル川に及ばなくなります。つまりアマゾン最長説の成立は、パラ川という「グレーゾーン」の解釈を国際社会が受け入れるかどうかに完全に依存しています。