東南アジア有数のバイク大国であるベトナムにおいて、人々の移動手段に明確な地殻変動が起きている。ハノイ市当局による内燃機関バイクの乗り入れ規制方針や燃料費の乱高下を背景に、都市部住民の関心は急速に電動モビリティへシフトした。その激流の中で急浮上したキーワードが「xe đạp trợ lực」である。
ベトナム国内では、ハノイのチャンズイフン通り(Số 109 Trần Duy Hưng)に拠点を構える大手チェーン「Xedapdientroluc.vn」をはじめ、輸入電動アシスト自転車の専門店が急成長を遂げている。店頭にはXiaomi Himo C30RやYADEA FLIT、Engweといった中国系・欧米系の最新E-Bikeが並び、15ヶ月保証や無利息分割払いを武器に若者層を取り込んでいる。しかし、そうした華やかな新型モデルの隣で、現地消費者が熱烈な視線を注ぎ続けているのが「Xe đạp điện trợ lực Nhật Bãi(日本の中古電動アシスト自転車)」と呼ばれるカテゴリーだ。
ベトナム現地の流通業者「Thế Giới Xe Chạy Điện」などの販売網でも、日本から渡った再生車両は常に品薄状態が続く。現地ユーザーが語る理由は明快だ。「中国製の格安フル電動バイクは、購入後1年でバッテリーが膨張したりフレームにガタが来たりする。一方、日本の中古アシスト自転車は10年前のモデルであってもフレームが歪まず、坂道で自然に背中を押してくれるセンサー精度が圧倒的だ」。ペダルを踏み込む力に応じて精密にモーター出力を制御する日本の技術基準(道路交通法施行規則に基づくアシスト比率)が、現地において最高峰の安全品質として評価されている。
さらに見逃せないのが、ベトナムの若年層・学生事情である。現地では50cc以上のバイク運転には免許が必要となるが、電動アシスト自転車であれば免許不要で高校生でも安全に通学できる。富裕層や中間層の親たちが「子どもの安全と信頼性」を最優先に考えた結果、多少高額であっても日本の中古車を買い与える動きが定着した。