物質を炎にかざすと特有の色が生じる現象を炎色反応と呼びますが、その正体は「原子核と電子が織りなすエネルギーのキャッチボール」です。
常温における銅原子の電子は、最もエネルギーが低く安定した「基底状態」の軌道に収まっています。しかし、ガスバーナーなどの炎によって約1,000℃以上の熱エネルギーが与えられると、電子はそのエネルギーを吸収して外側の高い軌道へと跳び移ります。この不安定な状態を「励起状態(れいきじょうたい)」と呼びます。
励起された電子は極めて不安定なため、わずか1億分の1秒という刹那の時間で元の安定な基底状態へと戻ろうとします。このとき、外側と内側の軌道のエネルギー差に相当する光エネルギーが外部へと放出されます。放出される光の波長(色)は、プランクの法則($E = h\nu = hc/\lambda$)に従い、元素固有の軌道エネルギー差によって厳密に1対1で決まります。
銅原子の場合、このエネルギー差が可視光線域の波長約510nm〜540nm(青緑色〜緑色)にジャストフィットします。ナトリウムが黄色(約589nm)、リチウムが深紅色(約671nm)を放つのと同様に、銅にしか出せない固有のシグネチャーが、私たちの目にあの涼やかな青緑色として映るのです。