早明浦ダムを語るうえで避けて通れないのが、吉野川水系における水利調整と「香川用水」をめぐる地域間の歴史的・行政的な力学です。
吉野川の水は、高知県の山間から徳島県を経て紀伊水道へ注ぐ本流から、途中の池田ダム(徳島県三好市)を経由して阿讃山脈をトンネルで貫き、水不足に悩む香川県へ「香川用水」として送水されています。さらに愛媛県側の銅山川3ダム(新宮・柳瀬・富郷)とも複雑に連携しています。
貯水率の低下に伴い、香川用水では第1次取水制限(上水10%、農水20%カットなど)から段階的に引き上げられ、2026年9月上旬には上水30%以上、農業用水に至っては50%を超える厳しい取水制限が敷かれました。讃岐うどん店や製麺工場、半導体関連工場などの産業界、そしてレタスや玉ねぎなどの特産品を抱える農家には直接的な打撃となりました。
では、取水制限の全面解除はいつ、どのような条件で決定されるのでしょうか。
吉野川水系渇水調整協議会の取り決めに基づき、取水制限の緩和・解除は「早明浦ダムの貯水率が特定基準(例:貯水率50%復帰で段階緩和、70%〜全量回復で全面解除など)」を持続的に上回り、かつ今後の気象予測でまとまった降雨が見込める場合にのみ、4県と国の全会一致をもって決定されます。一時的な出水で一時的にゲート操作を行い、放流を絞ったとしても、将来の渇水リスクが拭えない限り、自治体首長らは慎重な姿勢を崩しません。「雨が一度降ったから即座に蛇口全開」とはならないのが、水利協議の厳格な現実です。