「示方書の式で算定した剛性を信じて設計したところ、片持ち梁や長スパン床のたわみ実測値が想定の1.3倍に達した」――こうした現場技術者の苦悩は、今なお構造設計界隈で後を絶ちません。その最大の要因は、骨材の種類とヤング係数への影響を過小評価している点にあります。
コンクリート全体の容積の約7割を占めるのは骨材です。硬化セメントペースト自体のヤング係数は概ね10〜20 GPa程度であるため、コンクリート全体の剛性は骨材自体の硬さに強く依存します。地質学的に多様な日本列島では、地域によって産出される粗骨材の岩種が根本的に異なります。
- 石灰岩・玄武岩系骨材:骨材自体の剛性が極めて高く(ヤング率60〜80 GPa以上)、コンクリートの静弾性係数は示方書基準値より15%〜30%上振れする傾向を示す。
- 硬質砂岩・安山岩系骨材:全国で標準的に用いられ、示方書値とおおむね整合しやすい。
- 軟質砂岩・凝灰岩・一部の風化砂利:骨材自体の弾性係数が低く、同一強度でもヤング係数が示方書値より20%以上下振れすることがある。
ある大手ゼネコンの構造設計部長は、専門誌の取材に対し「特異な地質条件の現場や超高層RCプロジェクトでは、計算式頼みの机上検討を捨て、現地生コンプラントの骨材を用いた室内試験を義務付けている」と語っています。その検証に不可欠となるのが、JIS静弾性係数試験方法の概要(JIS A 1149「コンクリートの静弾性係数試験方法」)です。
JIS A 1149試験では、標準養生を行ったφ100×200mmまたはφ150×300mmの円柱供試体を用います。供試体の両側面に高精度なコンプレッソメータや電気抵抗線ひずみゲージを装着し、圧縮試験機によって破壊強度の約1/3まで荷重を載荷します。あらかじめ設定したベース応力点(ひずみ50×10⁻⁶付近)と1/3強度応力点における応力差およびひずみ差から割線弾性係数を算出します。2026年現在のプレストレスト橋梁や免震建物の設計では、このJIS実測データに基づく剛性検証が標準的な品質管理プロセスとして定着しています。