検索窓に「てんさい糖」と入力すると、候補に「体に悪い」「危険性」「デメリット」といった不穏な言葉が並びます。体に優しい調味料として選ばれているはずの食品に、なぜこのような悪評が付きまとうのでしょうか。食品安全基準と流通実態をリサーチすると、根拠のない3つの誤解が浮かび上がってきます。
体に悪いという噂の真相を紐解く1つ目の要因は、「農薬残留への懸念」です。甜菜は土の中で育つ根菜であり、病害虫の被害を受けやすいため、栽培過程で適切に農薬が散布されます。この事実が一部の極端な自然派言説によって「土の中で農薬を直接吸い込んでいるから危険」と誇張されて拡散しました。しかし、日本の農林水産省および厚生労働省が定める残留農薬基準は世界的に見ても厳格です。製糖工場での洗浄・抽出・石灰処理・ろ過・加熱殺菌工程を経た最終製品から有害な基準値超の農薬が検出された事例はなく、安全性は公的に担保されています。
2つ目の誤解は「遺伝子組み換え作物との混同」です。アメリカやカナダなどの一部地域では除草剤耐性を持つ遺伝子組み換え甜菜が商業栽培されています。この海外ニュースを目にした消費者が「日本の甜菜も遺伝子組み換えではないか」と不安を抱いた背景があります。しかし、日本国内で商業栽培されている北海道産甜菜は100%非遺伝子組み換え品種です。国産のてんさい糖を選んでいる限り、遺伝子組み換え作物を摂取する懸念は一切ありません。
一方で、風評被害ではない現実的なてんさい糖のデメリットと危険性も客観的に把握しておく必要があります。
第一のデメリットは「過信による糖質過剰摂取」です。どれほど体に優しい成分を含んでいても、てんさい糖の成分の約85〜90%はショ糖(砂糖成分)です。白砂糖(100gあたり約384kcal)と比べて、てんさい糖(100gあたり約380kcal)のカロリーはほぼ同等です。「てんさい糖だから太らない」「いくら食べても健康に良い」と錯覚して使用量を増やしてしまえば、当然ながら肥満や生活習慣病を招きます。
第二のデメリットは「料理への使い勝手の制約」です。白砂糖に比べて粒子がやや粗く水に溶けにくいため、冷たいドレッシングや冷菓作りに使うとジャリジャリとした食感が残ることがあります。また、淡い茶色がついているため、生クリームを真っ白に泡立てたい場合や、素材の白さを活かしたい京風の煮物には不向きです。さらに価格面でも白砂糖の約2倍のコストがかかる点は家計にとって無視できないデメリットと言えます。