市販の虫除けスプレーを選ぶ際、製品棚の前で迷う人が多いのがディート(DEET)とイカリジン(Picaridin)の差異です。どちらも蚊の触角にある受容体を麻痺させ、人間の存在を感知できなくする揮発性忌避剤ですが、その特性と使い分けは明確に異なります。
ディートは1940年代に米陸軍で開発された実績があり、蚊だけでなくマダニやツツガムシ、アブ、ブユなど極めて広範囲の吸血害虫に対して強力な効果を発揮します。日本国内でも2016年以降、高濃度ディート30%の製品が認可されており、長時間の効果持続が期待できます。ただし、プラスチックや合成繊維を傷める性質があり、12歳未満の子どもに対しては厚生労働省のガイドラインで使用回数の上限が設けられています。
一方、ドイツで開発されたイカリジンは、1990年代後半から世界的に普及が進んだ比較的新しい有効成分です。国内では濃度15%のプレミアム製品が主流となっており、その効果はディート30%と同等と認められています。最大のメリットは皮膚への刺激が非常に少なく、乳幼児から使用制限なしで何度でも塗り直せる点です。衣服の繊維や腕時計の樹脂パーツを傷める心配もないため、日常使いのファーストチョイスとして定着しています。
さらに2026年現在の害虫対策ギア市場では、化学成分を塗布するだけでなく、超音波振動によるミスト拡散式の超小型ポータブルディフューザーや、衣類に特殊なナノレベル微粒子加工を施して虫の着地そのものを防ぐ「着る防虫ウェア」など、物理工学アプローチを融合させたハイブリッドな製品が大きな注目を集めています。