ここ数年、3D CADソフトウェアと金属3Dプリンターの進化は凄まじかった。誰でも画面上で複雑な指輪を設計し、数時間後には金属の形に成形できる。だが、市場が最後に行き着いたのは「着け心地の違和感」と「石外れの多さ」という現実だった。
ジュエリーの着け心地を左右する「内甲丸(ないこうまる)」の微妙な削り出しや、コンマ数ミリの貴金属の爪を均一に倒して宝石を固定する「石留め」の技。これらは、長年の勘と手先の微細な感覚を必要とする領域だ。デジタル成形された土台を、最終的にどこまで追い込んで美しく仕上げられるか。ここに職人の技量が露骨に現れる。結果として、完全自動化を推進していたブランドほど、熟練技能士の手による最終仕上げへと舵を切り直している。