童磨の過去を語る上で欠かせないのが、江戸時代末期から明治初期にかけて存在した新興宗教「万世極楽教」と、そこで過ごした人間時代の過酷な環境です。公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』などの公式設定資料によると、童磨は生まれつき極めて珍しい「虹色の瞳」と「白橡(しらつるばみ)色の頭髪」を持って生を受けました。
その神秘的な容貌に目をつけたのが、他ならぬ実の両親でした。両親は我が子を「神の声が聞こえる特別な子」と信じ込み、自らが立ち上げた宗教団体「万世極楽教」の教祖として祭り上げたのです。物心ついた頃から、童磨の元には日夜、大人の信者たちが押し寄せ、現世の苦しみ、貧困、病、死の恐怖を泣き叫びながら訴えかけました。しかし、幼少期の童磨の頭脳は極めて明晰であり、大人がすがる「極楽浄土」などどこにも存在しない幻想であること、そして目の前で泣き喚く大人たちが「愚かで哀れな存在」であることを冷徹に見抜いていました。
この歪んだ家庭環境は、最悪の結末によって崩壊します。父親が信者の女性と不倫関係に陥り、それに逆上した母親が狂乱の末に父親を包丁でメッタ刺しにして刺殺。直後、母親は自ら毒を煽り服毒自殺を遂げました。血の海と化した部屋で両親の惨殺遺体を目の当たりにした時、一般的な子どもであれば激しいトラウマや狂乱に陥るはずです。しかし、当時幼かった童磨が抱いた感想は、「部屋を汚されて換気と掃除が大変」「血生臭くて嫌だな」という極めて事務的かつ無機質な苛立ちだけでした。この凄惨な事件によって、童磨が他者への愛情や悲哀、恐怖といった人間的感情を完全に持ち合わせていない事実が決定づけられたのです。