運動生理学や生体力学の標準値が「30度」であるとしても、人間の一人ひとりには骨格の個体差が存在します。万人にとって完全に同一の角度が存在するわけではありません。自身の骨格タイプを見極め、適切なアプローチを選択するための客観的判断基準を提示します。
インクライン種目で30度を維持すべき人・向いている骨格
- 胸郭に厚みがあるタイプ(樽型体型):胸椎を伸展させた際に自然と鎖骨が持ち上がるため、30度の設定で完璧に大胸筋上部の走行とプレスの軌道が一致します。もっとも筋肥大の恩恵をダイレクトに享受できるグループです。
- 肩関節の柔軟性が標準的な人:無理のない可動域で安全に高重量を扱えるため、バーベルを用いたストレートセットで筋肥大の主軸に据えるのがベストです。
角度を15〜20度まで下げる、あるいは種目を見直すべき人
- 胸郭が薄いタイプ(扁平胸):胸椎の伸展を作りにくく、30度でも三角筋前部が関与しやすくなります。このタイプは背もたれの角度を15度(プレート1枚をベンチの脚の下に噛ませる程度のローアングル)にするか、ダンベルプレスで肘の絞りを意識したフォームが極めて有効です。
- 過去に肩のインピンジメントや腱板損傷を経験している人:バーベルインクラインは避け、可動域に自由度があるダンベルや、角度を20度程度に抑えたアジャスタブルベンチでのトレーニングを強く推奨します。無理にバーベルで45度を扱うのは百害あって一利なしです。