なぜFMラジオの電波が地震の予知に繋がるのか。その背景には、地殻深部で進行する巨大なストレスと地球上空の電離層との複雑な相互作用が存在する。
地震が発生する直前、岩盤内部には急激な圧力がかかり、微細な破壊やラドンガスの放出、あるいは電荷の移動が生じると考えられている。これに伴い地表付近から上空に向けて電磁気的な影響が及び、高度数十キロメートルに位置する電離層の電子密度に乱れが発生する。本来であれば遠方まで届かないはずのFM電波が、この乱れた電離層に反射して通常とは異なる地点で受信される――これこそが電離層異常観測の基本原理だ。
串田氏はこの現象を地球物理学の従来の枠組みにとらわれず、長年の泥臭いフィールドワークによってパターン化した。前兆となる電波の受信パターン、変動の持続時間、そして静穏期の訪れ。これらを総合的に分析することで、震源の特定や規模の推定を行ってきたのだ。従来の地震学が「震源そのものの破壊現象」を直接観測することに重点を置くのに対し、電磁波観測は地殻と大気の連動に着目する点で画期的なアプローチといえる。