人間性を取り戻したパームが担った最大の役割は、王メルエムと軍儀の王者コムギの最期を見届けることでした。
小型爆弾「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」の毒に侵され、自らの死期を悟ったメルエムは、パームの透視能力を察知した上で「コムギと残された時間を過ごしたい」と静かに頭を下げます。絶対捕食者として君臨していた王が、一介の兵士であるパームに対して取った誠心誠意の懇願でした。
人類の安全保障という冷徹な大義と、目の前にある純粋な魂の交歓。二つの狭間で葛藤したパームは、自身の能力「淋しい深海魚」を通じて、暗闇のなかで静かに軍儀を打ち続け、やがて息絶えていくメルエムとコムギの姿を涙ながらに見守り続けました。
この場面においてパームは、人類側の戦士であると同時に、種族の壁を超えた「愛の証人」としての役割を果たしました。初期に見せていた激情型の性格からは想像もつかない、気高く澄み渡った精神の境地が描かれています。