野鳥の鳴き声を人間の言葉の音階やリズムに当てはめて解釈する文化を、日本語では「聞きなし(聴き做し)」と呼びます。ウグイスの「法、法華経(ホーホケキョ)」と並び、日本で最も有名な聞きなしの一つが、ホトトギスの「特許許可局(トッキョキョカキョク)」です。
早口言葉の定番としても知られるこのフレーズですが、明治時代以降、官僚制度の発足とともに東京の知識層やアナウンサーの発声練習などを経て急速に定着した比較的新しい解釈とされています。声の立ち上がりの鋭さと、4〜5拍子で小気味よく刻まれるリフレインが、官庁の名称の語感と奇跡的な合致を見せた好例です。
一方、江戸時代以前から民間で口伝されてきた代表格が「テッペンカケタカ(天辺欠けたか・頂辺掛けたか)」や「本尊掛けたか(ホンゾンカケタカ)」という聞きなしです。これらには、古くから伝わる悲しい兄弟の民話が色濃く影を落としています。
代表的な伝説によると、病気で目の見えない弟のために山芋を掘ってきた兄が、芋の固い先端(テッペン)ばかりを弟に食べさせ、自分は柔らかい中心部を食べていたところ、弟は兄が自分に粗悪な端切れを押し付けていると激しく誤解。怒った弟に包丁で腹を裂かれて命を落とした兄が、鳥に化身して「(自分は決して独り占めなどしておらず)テッペン欠けたか、テッペン欠けたか」と身の潔白を叫び続けている、という凄惨なストーリーが各地に残されています。また「本尊掛けたか」は、掛け軸の本尊を粗末にした親兄弟の戒めとして語られる仏教説話に由来しており、日本人がホトトギスの鋭い声に「切実な哀訴」を感じ取ってきた歴史を物語っています。