作品を初期エピソードや断片的な情報だけで追っている一部のネットユーザーの間では、「斉木楠雄は本質的に人間嫌いで、トラブルに巻き込まれたくないだけの冷淡な利己主義者である」という誤解が散見されます。しかし、これは物語全体の文脈を完全に見誤った皮相的な見解です。
楠雄が他人を遠ざけようとしていた真の理由は、自己保身だけではありません。彼の超能力は地球を数日で滅亡させられるほどの超質量を誇り、感情の揺らぎ一つで大惨事を引き起こしかねない危険性を孕んでいます。彼が他者と距離を置いていたのは、「周囲の人間を自分の制御不能な力に巻き込みたくない」という、無自覚かつ強烈な防衛本能と優しさの裏返しでした。
もし彼が真の利己主義者であれば、燃堂や海藤のピンチをわざわざリスクを冒してまで救う必要はありません。照橋のストーカーを秘密裏に退治することも、クラスメイトの旅行が台無しにならないよう天候をコントロールすることもなかったはずです。彼が発する「やれやれ」というため息は、突き放す言葉ではなく、不器用な少年が他者と関わる際に支払う愛情のコストそのものだったのです。