皮膚科の臨床現場において、金属接触による皮膚障害は「アレルギー性接触皮膚炎」と「刺激性接触皮膚炎」の2種類に大別されます。自身に現れている皮膚炎がどちらに該当するのかを正確に見極めることが、悪化を防ぐ第一歩です。
日本皮膚科学会の診療ガイドラインでも示されている通り、金属アレルギーは免疫細胞が関与するIV型(遅延型)アレルギーに分類されます。金属と接触した直後ではなく、半日から2日ほど経過してから猛烈な痒みや赤み(紅斑)が出現するのが決定的な鑑別点です。代表的な発症部位ごとの臨床的特徴は以下の通りです。
耳たぶ(ピアスホール周辺の症状)
初期段階ではピアスの刺入部周辺にかすかな痒みやカサつきが生じます。進行すると皮膚が赤く腫れ上がり、毛細血管の拡張に伴う熱感を帯びます。さらに悪化すると組織液(浸出液)がにじみ出てジュクジュクとした状態になり、乾燥して黄色いかさぶた(痂皮)を形成します。これを放置すると、ピアスの金属に反応し続けた生体が異物を排除しようと過剰な肉芽組織を形成し、硬いしこりや肥厚性瘢痕、ケロイドへと移行するリスクがあります。
手首(腕時計・スマートウォッチ接触部)
腕時計の裏蓋やバックル、スマートウォッチのセンサー周辺の形状に一致して、境界線が明瞭な赤い湿疹や細かな点状のブツブツ(丘疹)が現れます。密着度が高く汗をかきやすい部位であるため、強い痒みとともに小さな水ぶくれ(小水疱)が密集して生じる症例が目立ちます。時計を外した後も痒みが数日間にわたって持続するのが特徴です。
首周り・胸元・腹部(ネックレスや衣類の金具)
チェーンが直接触れる首筋に沿って、ミミズ腫れのような線状の赤みや強い痒みが生じます。ベルトのバックルやジーンズの金属リベットが当たる下腹部・骨盤周りでは、汗と摩擦が加わることで皮膚のバリア機能が低下し、貨幣状の円形湿疹や色素沈着を伴う慢性湿疹へ進行しやすくなります。
手のひら・足の裏(歯科金属による掌蹠膿疱症など)
金属が直接触れていない部位にもかかわらず、手のひらや足の足底に無菌性の小さな膿(膿疱)や水疱が多発し、皮がポロポロと剥け落ちる症状を繰り返す難治性疾患が「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」です。過去に歯科治療で充填された金銀パラジウム合金やアマルガムなどから溶け出した微量の金属イオンが消化管や口腔粘膜から吸収され、血流に乗って全身を巡ることで免疫応答を引き起こす「全身性接触皮膚炎」の代表例として知られています。