かつて学校教育を受けた世代にとって、「弥生時代の始まり=紀元前300年頃」という年代観は長らく常識でした。しかし、考古学界ではいま、弥生時代の始まり年代の新説が定説化しつつあります。
発端となったのは、2003年に国立歴史民俗博物館(歴博)の研究グループが発表した研究成果です。土器に付着した炭化米などの有機物を高精度に測定する「炭素14年代測定法(AMS法)」を駆使した結果、九州北部の弥生早期(水田稲作の開始期)は、従来説より約500年も古い紀元前10世紀頃(約3000年前)まで遡ることが判明しました。
発表当初は学会内でも激しい議論が巻き起こりましたが、その後の追試や出土土器の型式学的編年との整合性検証が進み、現在では多くの教科書や歴史資料集でも「弥生時代は紀元前10世紀頃から」という記述へと書き換えが進んでいます。縄文から弥生への移行は、ある日突然起きた断絶ではなく、数百年をかけたグラデーションを伴う緩やかな技術と文化の浸透プロセスであったことが明らかになっています。