ムタというキャラクターに圧倒的な生命力を吹き込んだのが、実力派俳優の渡辺哲さんによるボイスキャストです。野太く低音でありながら、どこかユーモラスで温かみを感じさせる声の演技は、ムタの「強面だが情に厚い」二面性を完璧に体現しています。アニメ声優に本職の俳優を起用し、自然体のリアリティを追求するジブリならではの見事なキャスティングと言えます。
また、ムタのビジュアルや仕草には明確なモデルが存在します。スタジオジブリの制作スタジオ近辺を縄張りにしていた地域猫「ウシコ(牛子)」です。白地に黒のブチ模様が入った大柄な猫で、スタッフの間では「社屋の主」のように親しまれていました。
宮崎駿監督をはじめとするクリエイター陣が、日常の中で観察していたウシコの堂々とした佇まい、媚びない姿勢、そして重量感あふれる歩き方が、そのままムタの作画やキャラクターデザインへとフィードバックされています。日常の観察をファンタジーへと昇華させるジブリの真骨頂が、ムタの造形にも息づいています。