ネットカルチャーの歴史において、読者に強烈な爪痕を残した秀逸作は、いくつかの明確な類型に分類できます。ここでは、特に反響の大きかった代表的な系統を解説します。
① 家族・日常崩壊型(鬱展開の極致)
もっともポピュラーでありながら精神的ダメージが大きいのがこのタイプです。「あ」さごはんをたべたよ、「い」もうとはまだねてる、「う」ごかないんだ、「え」んえんなかないでねおかあさん、「お」にはパパだったんだね——といった、家庭内での凄惨な事件を想起させる構造を持ちます。直接的な流血描写を一切用いず、幼児の無垢な視線を通じてあいうえお作文の鬱展開を描き出す手法は、サイコホラーの真骨頂といえます。
② 縦読み・多層暗号型(古典的ネットギミック)
文章全体は当たり障りのない日常の風景を綴りながら、各行の頭文字だけでなく、末尾や斜めの文字列を拾うと「たすけて」「ころされる」「うしろにいる」といった悲痛なSOSや脅迫が浮かび上がる縦読みホラーです。掲示板文化の成熟期に数多く生み出され、読み手に能動的な「謎解き」を強いることで、恐怖体験を何倍にも増幅させます。
③ サイコパス・倒錯的愛情型
ストーカーや異常殺人者の心理を淡々とトレースした作品群です。ターゲットに対する執着を「あ・い・う・え・お」のリズムに乗せて語り、最終行で相手がすでに手中に収められている、あるいは解体されている事実を突きつけます。人間の倫理観が完全に欠落したサイコパス風のあいうえお作文は、読者に言いようのない生理的嫌悪感をもたらします。