他人の視線や歩行の流れを無視して画面を注視する行為に対し、周囲が「頭おかしい」とまで強い言葉で不快感を示すのはなぜか。その根底には、他者の無神経な行動によって自身の安全が脅かされることへの自己防衛本能と、公共の場における他者配慮の欠如に対する強い倫理的反発がある。
警察庁が公表している事故統計を見ても、歩行中のスマートフォン操作に起因する交通事故や人物同士の衝突事案は深刻な推移を辿っている。特に駅のホームからの転落や自転車との接触事故においては、命に関わる重傷事案も少なくない。東京消防庁の救急搬送データを見ても、歩きスマホが原因でケガを負い搬送された人の多くが、自らの負傷にとどまらず「他者を巻き込んだ衝突事故」を引き起こしている実態が浮かび上がる。
X(旧Twitter)などのSNS上では、「階段で急に立ち止まられて追突しそうになった」「幼い子供と手をつないで歩いているところに突っ込んできた」といった悲鳴に近い口コミが絶えない。交通安全の観点から見れば、他人の通行権や身体的安全を無頓着に脅かす振る舞いが、周囲に激しい怒りと不信感を植え付けているのだ。