中の湯温泉を語る上で避けて通れないのが、1995年2月に発生した安房トンネル工事現場での水蒸気爆発事故です。旧道沿いにあった旧・中の湯温泉旅館は、工事中に噴出した火山性ガスと土砂崩落の直撃を受け、移転を余儀なくされました。一時は宿の存続すら危ぶまれる危機的状況に陥りながらも、1998年秋、安房峠の中腹にあたる現在地(標高1,500m地点)へと場所を移し、見事な再建を果たしました。
移転後の旅館は、木造の温もりと山小屋風の素朴さを残しながらも、秘湯宿としては極めて清潔感の高い近代的な設備を備えています。この中の湯温泉 移転の経緯を知る登山愛好家や地元関係者からは、「大自然の猛威と人間の復興への意志が共存する特別な場所」として、今なお深い敬意をもって親しまれています。