北海道の二大若鶏半身グルメを語る際、避けて通れないのが道央・小樽の「半身揚げ」との比較論争です。観光客の間では「どちらも似たような鶏の半身料理だろう」と混同されがちですが、調理哲学、加熱温度、脂の落とし方、歴史的バックボーンに至るまで、両者は対極の個性を有しています。
小樽の「若鶏半身揚げ」が高温の植物油(170〜180度前後)で一気に皮目をクリスピーに揚げるフライ文化であるのに対し、旭川の「しんこ焼き」は強火の遠火による炭火焼き(素焼き)です。遠赤外線効果で中心部に肉汁を閉じ込めつつ、余分な皮下脂肪を炭へと滴らせて立ち上る煙で燻し焼きにするため、仕上がりの軽やかさとスモーキーな芳香は完全に別次元の体験をもたらします。
油で揚げることで皮のクリスピー感を極限まで引き出した小樽スタイルも絶品ですが、旭川しんこ焼きの真髄は「炭火による燻香」と「タレの焦げたカラメル香」にあります。脂を適度に落としつつも、骨髄から染み出す滋味が肉全体を包み込むため、食べ進めても胃もたれしにくく、酒の肴として何十年も愛され続けている理由がここにあります。