生命が何億年もの飢餓の歴史を生き延びてこられたのは、生体恒常性を維持するホメオスタシス機能が備わっているからです。日常の食事を急激に絶つ、あるいは極端なカロリー制限を行うと、脳の視床下部は「個体の生命が飢餓の危機に瀕している」と判断し、生存のための強力な防衛スイッチを入れます。
この防衛策の中心となるのが基礎代謝低下のメカニズムです。甲状腺ホルモン(特に活性型のT3)の分泌が抑制され、心拍数や体温が低下。さらに、日常の無意識な動作に伴うエネルギー消費であるNEAT(非運動性熱産生)が本人の自覚なしに激減します。身体はエネルギーを一切外へ逃がさない「完全省エネモード」へ突入するわけです。
加えて、内分泌系では食欲抑制ホルモンである「レプチン」が激減し、逆に強烈な食欲を刺激する「グレリン」が過剰分泌されます。同時に、副腎皮質から分泌されるストレスホルモンのコルチゾールが高止まりし、インスリン感受性が悪化。結果として、身体はわずかに入ってきた栄養を余さず中性脂肪として溜め込もうとする飢餓状態と体脂肪蓄積の負のスパイラルを完成させます。「食べないのに痩せない理由詳細まとめ」の根底には、人類のDNAに刻まれた完璧な生命維持システムが働いているという皮肉が存在します。