ネット上の簡易的な解説記事や動画で散見されるもっとも危険な誤解が、「高音が出ないときはアンブシュアをしっかり締めて息を強く吹き込む」という指導文句です。このアドバイスを鵜呑みにした初心者は、下唇を過剰に巻き込み、下顎の力でリードを下から強く噛み潰してしまいます。結果として、リードの自由な振動が完全にストップし、息が詰まって音が裏返るか、ピッチが異常に上ずった金切り声のような音しか出なくなります。
真実は全く逆です。音響力学の観点から見れば、高音域を鳴らすために必要なのは「口の締め付け」ではなく「口腔内容積の縮小と息の流速(スピード)」です。舌の後部を少し持ち上げ、母音の「イ」やドイツ語の「ヒ(ch)」を発音するときの口内形状を作ると、息の通り道が狭まり、同じ呼気量でも息のスピードが劇的に加速します。この高速の気流が管内に送り込まれることで、初めてリードが高周波で安定振動を始めます。
また、レジスターキー使い方に関する大きな誤解も見逃せません。キーを「上から強く押し込む」動作をしてしまうと、左手親指の付け根に強い力みが走り、親指のトーンホールがずれる原因になります。正しくは、親指の腹をトーンホールに置いたまま、指先側をレジスターキーの突起へ「軽く傾ける・転がす(ローリング)」感覚で操作しなければなりません。指の支点がブレない脱力操作こそが、高音を安定させる真の技術です。