数々の誤解や賛否両論を呼びつつも、なぜスイデンテラスはこれほどまでに人々を惹きつけてやまないのでしょうか。その最大の源泉は、プリツカー賞受賞建築家である坂茂(ばん しげる)氏が手がけた唯一無二の空間意匠にあります。
周囲ののどかな田園風景を損なわないよう配慮された木造2階建ての低層建築は、庄内平野の雄大な地平線と見事に調和しています。エントランスに足を踏み入れた瞬間、天井を埋め尽くす幾何学的な木造グリッドの美しさに目を奪われます。坂氏の代名詞とも言える再生紙を利用した「紙管(しかん)」が、ラウンジチェアの背もたれやヘッドボード、柱周りなど随所に配され、紙とは思えない強度と温かみのある質感を醸し出しています。
館内には約1,000冊の本が並ぶライブラリースペースが複数箇所に点在し、「オトナもコドモも、コドモもオトナも」をテーマに厳選された書籍に囲まれて、時間を忘れた読書に没頭できます。窓の外に目を向ければ、春は水鏡に映る青空、夏は風にそよぐ青々とした早苗、秋は黄金色の絨毯、そして冬は一面の銀世界と、季節ごとにまったく異なる表情を見せる庄内平野の借景が広がります。建築そのものが自然のキャンバスとなり、時の移ろいを五感で味わう滞在設計は、日常の喧騒から逃れたい現代人にとって究極の贅沢と言えます。