ネット上の絵画指導記事や掲示板では、しばしば「コンクールで勝つには細かいディテールまで図鑑通りに描くべし」という言説が流布されています。しかし、これは現代の児童絵画審査において最も警戒される落とし穴の一つです。
美術審査に携わる教育関係者が口を揃えるのは、「図鑑を横に置いて模写した絵は、数千枚並べた瞬間にすぐ見分けがつく」という事実です。図鑑の写真やイラストは静止した標本を記録するためのものであり、そこには「飛翔するトンボの鼓動」も「子どもが追いかけたときの息遣い」も存在しません。結果として、足の節の数や翅脈の配置だけが正確で、生命感の抜け落ちた硬直した絵になってしまいます。
また、夏休みの宿題トンボの絵ポスターとして学校経由で提出する際、ポスター指定(文字入れ必須)でない限り、画用紙の中に「とんぼを大切にしよう」「自然を守ろう」といったスローガンを無理に書き込むのは避けるべきです。絵そのもののメッセージ性が文字に依存してしまい、純粋な絵画コンクールとしての評価対象から外れてしまうリスクがあるためです。訴えたい思いは文字ではなく、色彩のコントラストやトンボの生き生きとした表情によって語らせるのが鉄則です。