煌びやかな刺繍や重厚な織りで仕立てられる行司の衣装ですが、その費用や制作背景にも独特の世界が存在します。
十両格以上の行司が着用する装束は、主に京都の西陣織などの高級絹織物(正絹)で作られます。生地の織り方や金銀糸の使用量、手作業による仕立て工程によって価格は異なりますが、1着あたりの相場はおよそ50万円から150万円以上に達します。行司は本場所の15日間で毎日異なる装束を着替えることも多く、夏場所・名古屋場所用の「薄物(絽や紗)」や冬用の装束を揃えると、莫大な金額になります。
これらの高額な装束は、行司本人がすべて購入するわけではありません。その多くは、力士と同様に熱心な支援者である「タニマチ(後援者)」から昇進祝いや記念として寄贈されます。
衣装の胸や背中、袖にあしらわれる「家紋」にも特徴があります。力士の化粧まわしのように、行司自身の生家の家紋を入れるケースもあれば、装束を寄贈してくれたタニマチの家紋や、所属する相撲部屋の紋を入れるケースもあります。土俵上の装束を細かく観察すると、行司ごとに異なる多彩な家紋意匠を確認することができます。