公安の私服尾行では、対象者に気付かれずに追尾を続けるため、服装にいくつかのギミックが仕込まれています。映画のように付け髭や派手なカツラを使うような極端な変装は、かえって不自然さを生むため現実の現場では行われません。実務で行われるのは、「日常の延長線上にあるシルエットの変更」です。
代表的な手法が、リバーシブル仕様のアウターや、薄手のナイロンジャケットの重ね着です。駅の改札を抜けた瞬間に上着を裏返して色を変えたり、脱いでバッグに押し込んだりすることで、対象者の視界に入った際にも「別人が歩いている」と錯覚させます。メガネの着脱、マフラーやネックウォーマーの有無、キャップの被り分けといった小物の変化も多用されます。
また、公安の変装ルールにおける鉄則は「脱ぎ着のしやすさ」と「シワになりにくさ」です。車内や雑居ビルの陰で何時間も身を潜める張り込みでは、服が傷みにくく、埃や汚れが目立たない化繊混紡のタフな素材が好まれます。