煮崩れさせずに芯まで味を染み込ませ、鏡のように美しい照りをまとわせる。京都や東京の割烹が長年守り続けてきた決定版の調合バランス、それが「出汁8:酒2:みりん2:濃口醤油1.5:砂糖1」の黄金比だ。調味料を最初からすべて鍋に放り込んではいけない。浸透圧の差を利用し、まずは出汁・酒・砂糖だけで煮立てて甘みを細胞の奥へ抱え込ませる。
醤油とみりんは二度に分けて投入する。これが極上の味染みを生むプロの鉄則だ。一度目で味の骨格を馴染ませ、煮汁が少なくなった終盤に鍋肌から残りを注ぎ入れ、鍋を大きく煽って芋の表面を煮汁の中で躍らせる。「煮っころがす」という言葉の語源そのものの動作によって、みりんの糖分と醤油の旨みが乳化するように絡みつき、息をのむような艶と照りが立ち上がる。