楽曲の深層に迫る前に、まずは本作が世に放たれた当時の熱量と客観的な足跡を整理しておかなければなりません。2009年2月18日、aikoの通算25枚目シングルとしてリリースされた本作は、『milk/嘆きのキス』という強力な両A面シングルとして市場に投入されました。当時、ブリヂストンアルベルトCMソングとして成海璃子が出演するテレビCMで大量オンエアされ、春の通学路を象徴するテーマソングとして日本全国のお茶の間に浸透したことを覚えている方も多いはずです。
音楽業界において本作が残した記録は極めて大きな意味を持っています。デビュー11年目にして、aikoにとってシングルチャートでは自身初となる「オリコン週間シングルランキング第1位」を獲得した記念碑的作品だからです。当時、彼女はすでにアルバムチャートで何度も首位を獲得し、ドームやアリーナを満員にするトップランナーでした。しかし、意外にもシングル首位の座には手が届いておらず、満を持しての首位奪取は音楽メディアのみならずファンコミュニティを大きく揺るがしました。
もう一方の表題曲である『嘆きのキス』が、ダークで重厚なバラード(ゲーム『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』主題歌)であったことに対し、『milk』は陽光を浴びて駆け抜けるようなアップテンポナンバー。この光と影の対比こそが、シングル全体の深みを決定づけていました。翌2010年3月にリリースされた9thアルバム『BABY』では堂々の1曲目を飾り、アルバム全体の推進力を牽引する決定打となっています。