コンサート会場に足を踏み入れた人々が異口同音に口にするのは、「CD音源以上の声が出ている」という衝撃だ。山下達郎のライブは、PAを通した音が客席の最後列まで緻密かつ圧倒的な音圧で届くことで知られる。加齢による声帯の変化は避けられないはずの年齢でありながら、キーを下げることなく原曲通りのピッチで歌い上げるスタイルは奇跡的としか言いようがない。
この驚異的な声帯を維持している背景には、日常の徹底されたコンディショニングがある。喉を痛めないための温度・湿度管理はもちろんのこと、公演前には丁寧な発声練習と独自のストレッチを欠かさない。アルコールや喫煙を控え、体に負担をかけない規則正しい生活を愚直なまでに守り抜く。過酷なツアーを完走するための体力づくりも含め、プロフェッショナルとしての冷徹なまでの自己管理が、73歳となった今も色あせない歌声を支えているのだ。