結論から明かすと、幻となったリメイク映画企画において竹野内豊が演じる予定だった役柄は、他ならぬ主役の怪奇人間「ガス人間=水野役」でした。
1960年に公開されたオリジナル版『ガス人間㐧1号』は、東宝が誇る「変身人間シリーズ」の最高傑作と称される作品です。名バイプレイヤーの土屋嘉男が怪演した水野は、生体実験の事故によって肉体を気体(ガス)化させる能力を得た特異なキャラクターでした。自らの欲望を満たすためではなく、零落した日舞の家元・春日藤千代(オリジナル版:八千草薫)のリサイタル資金を調達するために銀行強盗を繰り返すという、哀切を帯びた「純愛犯罪者」として描かれています。
現代の映画ファンが「竹野内豊」というキャスティングを耳にすると、事件を執念深く追う「岡本警部役(オリジナル版:三橋達也)」のようなハードボイルドな刑事を想像しがちです。しかし、制作陣が彼に求めたのは、人間の姿を失いながらも愛のために罪を重ねる異形のモンスターでした。当時、関係者の間では「竹野内の憂いを帯びた眼差しと低音ボイスが、悲哀に満ちた水野の人物像に完璧な説得力を与える」と絶賛され、邦画界を揺るがす大胆なキャスティングとして大きな期待を集めていたのです。