この制度の存在を、歴史の教科書ではなくサブカルチャーを通じて知った世代も多い。その決定打となったのが、大友克洋が描いた不朽のSFサイバーパンク傑作『AKIRA』だ。
主人公・金田正太郎が身にまとう真っ赤なレザージャケット。その背中にプリントされた大きなカプセルのマークと、「GOOD SMILE」の文字、そして作品世界に漂う「健康優良不良少年」という強烈なフレーズ。あれは単なる語感の面白さで選ばれたキャッチコピーではない。国家が国民の肉体を管理・統制し、規格に当てはめようとした制度に対する、これ以上ない諧謔と意趣返しだったのだ。秩序から脱落した暴走族の不良少年が、国家の掲げた「健康優良」の看板を背中に背負ってネオ東京の夜を疾走する――その痛烈なアナーキズムこそが、作品の批評性を極限まで高めている。