Webメディアや健康系SNSでは、「消化には絶対に右向き」「右を下にして寝れば胃もたれしない」といった言説が定説のように語られがちです。しかし、臨床現場ではこの「右向き神話」を鵜呑みにした結果、症状を悪化させる患者が後を絶ちません。
最も危険な盲点は、加齢や生活習慣によって食道と胃をつなぐ「下部食道括約筋(LES)」の締まりが緩んでいる人の存在です。この筋肉が正常であれば、右向きで寝ても胃酸が食道へ逆流することは防げます。しかし、加齢、肥満、前屈みのデスクワークなどで腹圧が高まっている人が右向きで横になると、開いた噴門から強酸性の胃液がダイレクトに食道粘膜へと流れ込みます。これが食後すぐ寝る胃もたれや夜間の咳込み、胸を焼くような激痛の元凶です。
「消化を助けようとして右を下にして寝ていたら、翌朝声が枯れて喉が焼けるように痛くなった」というケースは、逆流性食道炎予備軍が右向き神話に飛びついた典型的な失敗例です。自分の胃腸が「送り出す力の低下(もたれ)」に悩んでいるのか、「逆流を止める力の低下(胸焼け)」に悩んでいるのかを区別しない体勢選びは、極めてハイリスクな行動といえます。