アジアNIESが成し遂げた爆発的な成長要因を探ると、開発経済学における定石とも言える明確な共通項が浮かび上がります。最大のエンジンとなったのが、国内市場の保護・育成を目指す「輸入代替型工業化」から、外貨獲得を最優先する輸出指向型工業化への大胆な政策シフトでした。
天然資源を持たない四小龍は、自国内の限られた購買力に依存するのではなく、グローバル市場へ直接製品を供給する戦略を選択しました。繊維や雑貨などの軽工業からスタートし、稼得した外貨を元手に造船、鉄鋼、石油化学などの重化学工業、さらには電子部品や精密機械へと産業構造を電光石火のスピードで高度化させたのです。この産業転換を可能にした決定的な要素は、主に次の3点に集約されます。
第一に、政府主導の強力な産業政策です。韓国における朴正煕政権下の財閥(チェボル)育成、シンガポールにおけるリー・クアンユー首相の強力なトップダウンによる外資誘致、台湾における工業技術研究院(ITRI)を中心とした半導体クラスター形成など、各政府が明確な戦略を描いて資源を集中投下しました。
第二に、極めて高い教育水準と勤勉な労働力の供給です。儒教的価値観を背景に教育熱が極めて高く、数学・理科教育に注力したことで、高度な製造工程や品質管理に適応できる優秀なエンジニア層が短期間で形成されました。
そして第三が、多くの途上国が失速する中進国の罠を回避したイノベーション戦略です。賃金が上昇すると、低賃金を武器とする後発途上国に軽工業のシェアを奪われ、成長が停滞する現象を「中進国の罠」と呼びます。しかしアジアNIESは、人件費高騰に直面した段階で即座に研究開発(R&D)投資へと舵を切り、付加価値の高い先端テクノロジー産業や国際金融サービス業へと脱皮することに成功しました。これが、他地域の新興国と彼らを決定的に分けた分岐点です。