「耳垢=不潔なゴミ」という長年の思い込みが、耳トラブルの最大の温床となっています。耳の穴から鼓膜までの約2.5cmから3cmに及ぶトンネル(外耳道)は、手前側の3分の1にだけ耳垢腺や皮脂腺が存在し、奥の3分の2はわずか0.1ミリ程度というラップフィルム並みの極薄の皮膚が骨に直結しています。
耳垢には弱酸性の皮脂成分と抗菌酵素(リゾチーム等)が含まれており、外部からの細菌感染や乾燥を防ぐ天然の保護バリアとして機能しています。ところが、「良かれと思って」入浴後や毎朝のように綿棒を突っ込むと、この脆弱な保護皮膜をやすりで削るように削ぎ落としてしまいます。皮脂が失われた皮膚は砂漠のように極度に乾燥し、防御反応としてヒスタミンが分泌され、猛烈な痒みを発生させるのです。
さらに現代特有の要因として深刻視されているのが、ノイズキャンセリング機能を備えた密閉型ワイヤレスイヤホンの長時間使用に伴うイヤホン耳のかゆみです。耳鼻咽喉科の臨床データによると、密閉型イヤホンを2時間連続装用するだけで、外耳道内部の湿度は80%以上に達し、温度も約1.5〜2.5℃上昇することが確認されています。汗や蒸気でふやけた無防備な皮膚にカナル型シリコンチップの物理的摩擦が加わることで、微細な傷から細菌が侵入し、慢性的な外耳道炎を引き起こす構造ができあがります。