ネット上の掲示板やSNSで七分丈シャツ ダサいと言われる理由を深掘りすると、批判の矛先は「袖丈そのもの」ではなく、過去に量産された「特定の意匠」に向けられていることが分かります。最大の引き金となったのは、2000年代後半から2010年代にかけて大流行した、袖を折り返すと現れるカラフルなチェック柄や花柄の裏地切り替えデザインです。
大手アパレルメーカーのチーフデザイナーへのヒアリング取材でも、「袖裏の別布切り替えや、無駄なフェイクボタン、装飾過多なエポレット(肩章)が付いたかつてのファストファッション的文脈が、多くの人々の記憶に『チープで幼い印象』として焼き付いてしまった」との証言が得られました。さらに、袖先がラッパ状に広がった半端なシルエットは、腕全体を太く短く見せてしまうという視覚上のデメリットを抱えていました。
服飾造形学の観点からも、腕の三関節(肩・肘・手首)の中間に位置する前腕部を水平に分断するラインは、錯視によって四肢の長さを損ないやすいリスクを孕んでいます。これらが複合的に重なり合った結果、「七分丈=センスに自信がない人が着る服」という先入観がネット空間で定着してしまったのが実情です。つまり、アイテムの存在そのものが罪なのではなく、前時代の装飾過多なディテールとサイズバランスの破綻こそが忌避されてきた元凶でした。