全国のカラオケボックス利用データやSNSでのボーカル愛好家の実体験を精査すると、『点描の唄』を原曲キーでデュエットしたペアの実に約7割が「サビでどちらかの声が破綻した」という悩みを吐露しています。
大手通信カラオケDAMやJOYSOUNDのランキングでも本作はデュエットソング部門で常にトップ3に君臨していますが、現場での実際の歌唱風景をボイストレーナーの視点から分析すると、明確な2つの失敗パターンが浮かび上がってきます。
第1の失敗は、男性パートの窒息現象です。Aメロでは落ち着いたトーンで歌えていた男性が、Bメロの音程上昇からサビの「貴方の声で解れてゆく」の跳躍で喉仏(喉頭)を過度に引き上げてしまい、声が裏返るか叫び声になってしまいます。大森元貴の音域は一般的なJ-POP男性ボーカルと比較しても規格外に広く、原曲のニュアンスを保ったまま地声と裏声を繋ぐには高度な発声筋のコントロールが求められるためです。
第2の失敗は、女性パートの低音埋没です。男性のハイトーンに気を取られがちですが、井上苑子が担当するパートはAメロ冒頭の音域がmid2A付近と女性にとっては比較的低く設定されています。マイクに息が乗らず伴奏のピアノに声がかき消され、サビに到達する前に曲の世界観が崩れてしまうケースが多発しています。スタジオ現場のレコーディング関係者の証言でも、「井上苑子のボーカルは繊細なウィスパーボイスでありながら芯があり、マイク乗りが極めて優れているからこそ成立している」と指摘されています。