家庭用ミシンを持っていなくても、一切引け目を感じる必要はありません。高級プレタポルテのドレスやオートクチュールでも、表側に縫い目を響かせない仕上げには職人の手縫いが用いられます。自宅でワンピースの裾上げを手縫いで行う場合、基本となるのが「流しまつり縫い」と「千鳥がけ」です。
手縫いの最大の強みは、縫い目に適度な「あそび」が生まれるため、生地が突っ張らず、ワンピース特有のやわらかなドレープを殺さない点にあります。万が一長さを間違えた際も、リッパーやハサミで縫い糸を一本切れば、生地を傷めずにやり直すことができます。
手縫いを美しく仕上げるための決定的なプロセスは以下の通りです。
- 靴を履いた状態での着丈決め:普段合わせるパンプスやスニーカーを履き、鏡の前で丈をクリップで固定します。床から裾までの距離を均一に測ることが鉄則です。
- アイロンによる正確な折り目付け:裁縫の仕上がりの8割はアイロンで決まります。仕上がり線でしっかりと折り目をつけ、三つ折りにする場合は折り代を2.5cm〜3cm幅で均一にプレスします。
- 表地の織り糸を1〜2本だけすくう:裏側の折り返し部分に針を通したら、表地側は肉眼でギリギリ見える程度の繊維(1〜2本)だけをすくい取ります。ここで表地を深くすくってしまうと、表面にポツポツとした縫い目が出てしまいます。
- 糸を引きすぎない:キュッと強く糸を引っ張ると、表地に引きつれ(しわ)が生じます。指先で軽く撫でて、生地が平らな状態を維持できるテンションを保ちながら、1cm前後の間隔で縫い進めます。
伸縮性のあるニットワンピースやジャージー素材の場合は、クロス状に糸が交差する「千鳥がけ」を用いると、生地の伸びに糸が追従して糸切れを防ぐことができます。